
歯ブラシの衛生状態を保つプラチナ(白金)ナノ粒子とは?
前田 御社は白金ナノ粒子を用いた抗菌剤を販売しておられるのですね。
鍬本 はい、約10年前から、京都大学の先生と金属ナノ(10億分の1メートル)粒子に抗菌作用を持たせる研究開発を進めました。2008年にSKE赤マークを取得し、院内感染対策用のマスク、白衣、シーツ等の用途に展開している最中です。
前田 プラチナ(白金)ナノ粒子溶液とは、どんな成分でできているのですか?
鍬本 純水、白金、クエン酸、アスコルビン酸によって構成しています。
前田 金ではいけないのですか?
鍬本 はい、白金でなければ抗菌性が出ません。
前田 特許を取っておられるのですか?
鍬本 特許を申請しておりましたが、審査請求すると、審査の際に細かい製法情報の開示を要求される恐れがありましたので、取り下げました。これらの成分のバランスによって抗菌性能が出るのです、これを突き止めるのに、3年ほどかかりました。
検査に費用がかかる一方でしたから、一時はもう止めようかと思いましたが、先生の励ましにより、ついに極めることができました。
抗菌・消臭・抗ウイルス効果の実現に成功し、空気清浄機や電気デバイス等、生活用品から日用雑貨まで、あらゆる用途で使われ、効果を発揮しています。まな板や肌着など、それぞれの製品ごとに七つほど特許を取得しております。
また抗酸化効果もあり、化粧品や美容関連商品、健康機器まで幅広く「美」に係わることができ、大きな反響を得ております。
先生には事前に当社歯ブラシをご試用いただきましたが、いかがでしたか?
前田 抗菌性能は目に見えないものですから、従来の歯ブラシと特に違いを感じませんでした。
鍬本 おっしゃる通りです。
当社独自のプラチナナノ粒子溶液を用いて抗菌効果がある歯ブラシを商品化できれば、口臭、歯周病などで困っている人たちに喜んでもらえると思い、商品企画を行いました。
約3年前に歯ブラシのブラシ部分にプラチナ粒子をつける研究を開始しました。
2010年に市販の歯ブラシに当社プラチナナノ粒子溶液に含浸させることで、ブラシ部分に抗菌性が得られましたが、より品質の良い製品とするために、ブラシ部分を構成する樹脂にプラチナナノ粒子を混ぜ込む研究を開始しました。何度も抗菌試験に出しましたが抗菌効果が出ないことが続き、昨年ようやく抗菌試験をクリアすることができ、今回の歯ブラシの発売にこぎつけました。
最終的に当社の歯ブラシは、ブラシ部分の樹脂にプラチナナノ粒子を練り込み、歯ブラシ本体にプラチナナノ粒子溶液を塗布してあるため、軽く水洗いするだけで菌の繁殖を防ぐ、清潔な歯ブラシとしての特徴があります。
もっとこうすれば良いという改良点かありましたら、ご指摘下さい。
前田 そうですね。毛先の幅をもう少し狭くされたほうがよいでしょう。細かいところを磨こうとすると、現在の3分の2ぐらいにコンパクトにされたほうが良いと思います。
鍬本 ブラシの硬さについてはいかがでしょうか。
前田 歯周病の症状によっては柔らかいブラシが必要ですから、柔らかめ・普通・硬めの3種類があればいいですね。
柔らかいものから、だんだん硬いものにしていくとよいでしょう。
高田 ブラシは硬いものがよいのでしょうか。
前田 擦掃する能力としては硬いものが歯間に入りやすく、若い人にとっては硬いブラシのほうが使いやすいのです。
柔らかいと毛先かねてしまい、うまく入りません。
歯周病の人は歯と歯の間が開いていますから、柔らかいブラシでも入るのです。
あらゆる年代を対象にするには、やはり3種類の硬さの歯ブラシが必要でしょう。
また外国製品にはよくあるのですが、使い始めにお湯の中で、柄を使いやすい好みの角度にできればいいですね。また旅行用のコンパクトな歯ブラシには抗菌性が必要ですから、ぜひ開発して下さい。
鍬本 ありがとうございます、そこまで思いつきませんでした。
ベビー用の歯ブラシを作って欲しいとの要望が多いのですが、ブラシの硬さはどれくらいにすればよいのでしょうか?
前田 お母さんが赤ちゃんの歯を磨くブラシでしたら、毛先を皮膚にあてて痛くない程度の硬さがいいのではないでしょうか。
鍬本 参考にさせていただきます。
展示会に出品しましたら、販売させて欲しいとの業者が多く来られまして、9月から通信販売等を展開することにいたしました。
先生の病院でも、歯ブラシを販売しておられますか?
前田 はい、患者さんに合った歯ブラシで磨いてもらいたいという場合は、推薦しております。また売店でも販売しております。
鍬本 先生の病院で当社の歯ブラシによって歯周病の菌数がいかに減るかの実験をしていただくことは可能でしょうか?
前田 できると思いますよ。ちなみに、この歯ブラシは医薬部外品ですか?
鍬本 白金は厚労省の医薬部外品の項に入っていません。金や銀は入っているのですが。
高田 歯磨き粉の役割とは、どういうものですか。
前田 昔は研磨剤が入っている歯磨きが多かったのですが、現在、患者さんに薦めているのは、研磨剤の入っていない歯磨きです。
歯磨きは使い方がポイントです。歯磨き剤をすぐ吐き出されると効果がありません。特にフッ素入りの場合は、口の中にためておかないと作用しないのです、歯の表面あるいは歯周ポケットにしみこんでいきますが、歯の汚れを取る効果は短時間では得られるものではありません。むしろブラッシングの擦掃効果で機械的に汚れを取るほうが高いのです。
洗口液(マウスウォッシュ)と歯ブラシを使うという方法でもいいと思います。
鍬本 白金ナノ粒子溶液の場合は、約2分で黄色ブドウ球菌が死滅しますので、3分間歯磨きをすることは理想的だと思います。
前田 歯の黄ばみを取るためには、少し研磨刑の入った歯磨きを使う必要がありますが、歯科で機械的に清掃するほうが良いかもしれません。
鍬本 歳をとったら歯を大切にしないといけないと言われますので私も年に一度は歯科で歯石を取ってもらいます。
高田 口内環境を整えるという意味では、口々のケアとしていちばん大事なのが擦掃すること、口内の洗浄をマメにすることと、定期的に歯医者さんで清掃してもらうことが必要ですね。
前田 そうです。口の中には常在菌がいて、ある特定の菌だけが繁殖してしまうと、環境が変わってトラブルが起きやすくなります。
もっとも問題なのは、誤嘸性肺炎です。高齢の方で、口の中が十分に清掃できなくなり不潔になってしまうと、口の中の菌叢がのどや胃に流れこむことがあります。
胃に入った場合には多くは胃酸で事なきを得るのですが、気管から肺に入ると肺炎を起こしてしまう可能性があります。
高田 これから高齢化する社会においては簡単に口の中をキレイにできるものがあれば、もっとよいということですか。
前田 強力な薬剤を使って殺菌するというのは、それだけ副作用があるわけですから、もっと安全なものが求められます。
高田 歯医者さんによっては、歯周病菌を殺菌するために次亜塩素酸を使っておられるところもあるようです。
前田 歯科医が部位を限って使うことがあるかもしれませんが、ご家庭ではできないことです。
高田 私たちの製品では可能です。
鍬本 白金は飲料水としても販売されています。
前田 ペットボトル飲料がありますね。
鍬本 他の飲料の倍近くの価格ですが、毎年少しずつ売り上げが伸びているようです。
前田 野球選手のOBが、金が入った水を飲んでいると聞いたことがあります。
高田 金はナノ化するとピンク色になります。
鍬本 白金は黄色い溶液です。
金は触媒として優れているので白金と一緒に使う研究をしています。
前田 医療用として、例えばポリタンクの中に、この白金ナノ粒子を少し入れておいて水を殺菌するというようなこともできるわけですね。
最近、高価な歯ブラシが売られていますが、謳い文句に科学的な根拠がなかなかついてきていないようですから、本当に効果的なものを販売してもらいたいですね。
鍬本 私どもの方針としまして、しっかりしたデータの裏づけがあるものしか販売しておりません。
試験には費用がかかりますが、外部の北里環境科学センター(北里大学関連の試験・検査機関)でやってもらっています。今後の歯科関連品の臨床試験は先生の学校で、ぜひお願いします。
高田 若い人はもとより、高齢の方が健康でいるためには歯の健康が重要だと思います。私たちも通信販売で単に歯ブラシを売るのではなく、歯の健康に関する情報をお届けしたいと考えております。
前田 そうですね。口腔内の歯周病菌は、糖尿病を悪化させるなど、全身の健康にも関与していますから、早めに治しておくことが重要です。
御社の場合は、他の商品のトータルの中に歯ブラシもあることがアピールできる点になるでしょうね。
ところで白金ナノ粒子を樹脂などの歯科材料に混入させることができれば、口内で殺菌できるようになるでしょうね、この点についてはいかがですか?
鍬本 できるはずです。樹脂の主成分は何ですか。
前田 基本はアクリルですね。
高田 私たちはプラスチックにどれだけ練り込むかという研究もしておりますので、おそらくできると思います。
前田 セラミックはどうですか?歯をセラミックで作ることも多いのですが。
鍬本 清水焼の釉薬(ゆうやく)に使っていますから大丈夫でしょう。
前田 口の中にいる菌よりずっと小さなナノの抗菌剤であれば、長く効果が持続するように思います。
高田 ナノ粒子は凝集しやすいものですが、当社の白金ナノ粒子溶液の場合はキレイに分散され、効果も半永久的であることを検査で実証済みですので、安心してお使いいただけると思います。
身体の健康を守るために口内環境を整えることが重要なのですね。
鍬本 将来的には義歯洗浄剤も手がけたいですね。
先生のお話を伺って、歯科向けにも白金ナノ粒子を生かせる可能性があることがわかりました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

大阪大学大学院歯学研究科
顎口腔機能再建学講座 歯科補綴第二教室教授
大阪大学歯学部附属病院副病院長 歯学博士 前田 芳信氏
バイオエポック株式会社
(注)肩書等は2013年の掲載当時のものです。本文をそのまま載せてさせていただきました。